
トウモロコシは、イネ科の一年生植物です。穀物として私たちの食料や家畜の飼料にもなります。ほかにも、コーンスターチやコーン油として、食材の1つとしても利用されます。
トウモロコシは野菜というよりも、主食として利用する国が多く、世界三大穀物の1つです。
そんなトウモロコシの栄養と効能について見ていきましょう。
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トウモロコシの起源と歴史
トウモロコシの起源は、メキシコからグアテマラにかけて自生している「テオシント」という植物と考えられています。
しかし、テオシントには食用できない小さな実がほんの10個くらいが実るだけです。外見もトウモロコシとは異なるため、テオシントと別の種を交配させて作り出された、という説もあります。
トウモロコシは、紀元前5000年頃に、すでに大規模な栽培が始まっていました。
雑穀以外の穀物ではただ1つ、マヤ文明やアステカ文明でも、トウモロコシが大規模に栽培されていました。アメリカ大陸全土では主要な農産物でした。
1492年にはコロンブスがアメリカ大陸を発見し、そこで栽培されていたトウモロコシを持ち帰ったことでヨーロッパに伝わりました。
日本では1573年頃に、ポルトガル人によって熱帯型の硬粒種が長崎にもたらされました。
江戸時代の料理書には「火にあぶって食べるか、乾燥して粉に挽き餅にするのもよい」と書かれていて、加工品として当時は利用されていたことがわかります。
現在の日本のトウモロコシは、第二次大戦後に交雑品種の研究を重ね、1950年に開発された品種になります。
トウモロコシの種類
一般にトウモロコシの分類に用いられるのは、粒内のデンプンの構造です。
穀粒の性質や特徴によって、色々と分類されます。
馬歯種 (デントコーン)
通常、成長過程で糖分がデンプンに変わってしまうため、そのまま食べることはありません。主に家畜用飼料やデンプン(コーンスターチ)の原料として使用されます。
粒が成熟してくると柔らかい部分が収縮するため、冠部に馬歯のようにくぼみ(デント)ができます。そのためデントコーンと呼ばれます。
コーンスターチや飼料用の他に、近年バイオエタノール生産原料としても利用されています。
硬粒種 (フリントコーン)
フリントコーンは硬いデンプン層が穀粒全体に広がり、粒の冠部にくぼみがありません。害虫に対する抵抗性があり、低温でも受粉が可能です。
食用のほかに、家畜用飼料や工業用原料として使用されています。
爆裂種 (ポップコーン)
言葉の通り、菓子のポップコーンを作るために使用されます。
ポップコーンは穀粒が小さく、硬いコーンになります。加熱により穀粒の水分が膨張して弾け、ポップコーンになる特別なトウモロコシになります。
加熱するとスナック菓子として幅広い人気のポップコーンになります。
甘味種
スイートコーン
デンプン含量が少なく、糖質の含量が高い品種であり、世界的な規模で食用の野菜として栽培される、一般的な食用の品種です。
茹でる、焼く、蒸すなどの調理方法でそのまま食べるほか、コーンフレークの材料にもなります。
ベビーコーンまたはヤングコーン

生食用甘味種の、2番目雌穂を若どりして茹でたものです。
サラダや炒め物、煮込み料理などに用いられます。
ワキシー種 (ワキシーコーン)
完熟種子表面はワックスしたようにツルツルしているので、ワキシーコーンと呼ばれています。デンプンがもち性を示すため、もち米の代替品として、加工原料に使われます。
粒の中のデンプンにもち性があり、若いうちに収穫して蒸すと、もちもちとした食感があるのが特徴です。
発祥の中国南部の雲南地方から米国に伝わり、改良されたものが米国や南アフリカで栽培されるようになりました。
デンプンはもち米と同じように、アミロペクチンからなります。そのため主に食品用途に用いられます。
硬粒種 (フリントコーン)
爆裂種も、もともとはこのフリントコーンから生まれた品種です。加工食用・家畜用飼料や、工業用に使われることが多く利用されます。
角状デンプンと呼ばれる硬いデンプンが、粒の全体に付いています。メキシコ料理のタコス「トルティーヤ」の生地に使われるのがこのフリントコーンになります。
トウモロコシは、ほかにも以下のようにたくさんの種類があります。
- フラワーコーン
- ポッドコーン
- インディアンコーン
- ハイアミロースコーン
- ホワイトコーン
- ハイリジンコーン
- ハイスターチコーン
- ハイオイルコーン
トウモロコシの食感
トウモロコシは、ほかの野菜や果物とは違う食感を味わうことができます。
獲れたての種によっては生で食べることもでき、シャキシャキとした食感を味わうことができます。
ワキシーコーンのように、モチモチ感を味わうことができる品種もあれば、茹でたあともシャキシャキ感を味わうことができる品種もあります。
トウモロコシの旬と有名な産地
日本国内のトウモロコシの旬は、夏になります。
温暖地では6月末から収穫が始まりますが、ほとんどは7月から8月がピークで、遅いものなら9月末ごろまで収穫されています。
国内で食用に販売されているトウモロコシの有名な産地は、ほとんどが寒冷地になります。
北海道・長野県はスイートコーンやシルバーコーン・ハイカラーコーンのほとんどを、生産出荷しています。
綺麗な黄色い粒のゴールドラッシュ、人気の白いトウモロコシピュアホワイト・雪の妖精など、最も収穫量が高いのは北海道になります。
次いで高いのが、関東地方の千葉県・群馬県、茨城県、埼玉県と続き、関東も収穫が高くなります。
長野県や山梨県も高く、ほぼ北日本側で作られているといっても良い野菜になります。
良いトウモロコシの選び方
良いトウモロコシを選ぶためには、最も美味しい7月から8月に購入します。周りの皮になる葉の色は緑色が濃く、ひげが多いものほど粒の数が多くなります。
完熟したものは、ひげが黒褐色になっているもので、実が先までぎっしりと詰まったものが良いトウモロコシと言われています。

お店では、なかなか葉をむいて購入できない時もあります。しっかりと熟したトウモロコシをすぐに食べるなら、こういったトウモロコシを選んでみましょう。
トウモロコシに含まれる栄養素

トウモロコシのエネルギーになる栄養素
トウモロコシは、主食の原料になるほど糖質が高い野菜になります。タンパク質、脂質、ビタミン、無機質とすべての栄養素を含む野菜になります。
コーン油にもなる脂質は、不飽和脂肪酸のリノール酸、オレイン酸を豊富に含みます。
トウモロコシは、ビタミンの中でも野菜には珍しくビタミンB群を多く含みます。
トウモロコシの無機質
ナトリウムとPHのバランスを保つカリウムを多く含むため、塩辛い物を食べるときに一緒に食べると、ナトリウムとのバランスを摂ることができます。
ほかにも、味蕾(みらい:食べ物の味を感じる小さな器官)を生成するために必要な亜鉛、カルシウムが骨になるときに必要なマグネシウム、貧血を予防する鉄・銅も含まれます。
カリウムが多く含まれる野菜は、ほかに以下があります。
トウモロコシのビタミン
特にトウモロコシに含まれるビタミンB群の1つ「葉酸」は、妊娠中や授乳中に必要な栄養素です。
トウモロコシを普通に食べるだけなら、葉酸の摂取が過剰になることはありません。
三大栄養素である炭水化物・脂質・タンパク質をエネルギーに変えるための補酵素である、ビタミンB1、B2も豊富に含みます。
トウモロコシによる健康効果

整腸効果
トウモロコシは穀物になりますので、含まれる栄養素の1/4(100g中25g)は炭水化物になります。
しかし、トウモロコシはその中でも食物繊維をたくさん含みます。
豊富な糖質は、脳の栄養に、そして食物繊維は腸内環境を整える健康効果があります。便秘予防や大腸がんの予防効果もあります。
コーン油にもなる脂質は、必須脂肪酸のリノール酸(多価不飽和脂肪酸)やオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)をたくさん含みます。
血液サラサラ高血圧予防効果
トウモロコシに含まれる不飽和脂肪酸は、同じ脂肪酸でも飽和脂肪酸と異なり、コレステロール値の上昇を予防し、血液をサラサラにする働きがあります。高血圧や、脳血管疾患の予防効果があります。
トウモロコシにはたくさんの無機質を含みます。その1つカリウムは、ナトリウムとバランスを取る働きがあります。
ナトリウムの余分な吸収を抑えるため、トウモロコシのカリウムも、高血圧予防の効果があります。
ダイエット効果
トウモロコシに含まれる食物繊維は、腸内環境を整えるため、同じ穀物の中ではダイエット効果もあります。
ほかにも、トウモロコシの豊富なビタミンB1は炭水化物を、B2は炭水化物や脂質、タンパク質をエネルギーに変えるときに必要な栄養素です。
ビタミンB1、ビタミンB2は、三大栄養素をエネルギーに変えて、体に残すことを防ぐ働きがあります。
エネルギーに変える働きがあるために、疲労回復効果もあります。
ダイエットについてはヒントを以下にまとめてみましたので、併せてご覧ください。
トウモロコシの下処理と保存方法
トウモロコシは、生のまま保存する時でも、葉を取って洗って保存しましょう。
まず、葉を取ったら綺麗に洗い、1本ずつラップでしっかりと包みます。さらに、ジッパー付きのフリーザーバッグに入れて、冷凍保存をしましょう。
加熱したあとに冷凍保存する場合も、熱いうちに1本ずつラップをします。冷めてから、ジッパー付きのフリーザーパックに入れて、生と同じように冷凍保存をしましょう。

サラダやスープに入れるために保存をする場合は、茹でて粒をバラバラにしてから冷凍をしておくと、そのままスープに入れることができるので便利です。
トウモロコシのおすすめの調理法

トウモロコシは、1本のまま茹でたり、蒸したり、焼いたり、そのまま食べることもできます。
さらに、サラダやコロッケ、スープの具に入れることもできます。
そこで、夏にピッタリの変わった調理法「トウモロコシを利用したくず豆腐」をご紹介しましょう。
トウモロコシを利用したくず豆腐の材料
| 食材 | 分量 |
|---|---|
| トウモロコシ | 1本 |
| 水 | 150ml |
| くず粉 | 40g |
| 牛乳 | 1カップ |
| 塩 | 小さじ1/2 |
| うす口醤油 | 少々 |
| ワサビ | 適宜 |
| 醤油またはポン酢 | 適宜 |
トウモロコシを利用したくず豆腐の作り方
-
トウモロコシをラップでゆったりと包みます。500Wの電子レンジで分約4分温めます。
途中で、1回上下を返します。 -
鍋にトウモロコシと水を入れ、とうもろこしがやわらかくなるまで、4~5分煮ます。
-
あら熱をとり、ミキサーで攪拌(かくはん)します。
-
鍋にくず粉と牛乳を入れ、よく混ぜて煮溶かします。
-
ここに塩、うす口醤油、攪拌したトウモロコシを加え混ぜ、中火にかけます。
つやが出て、透明になるまでしっかりと練りましょう。 -
小さな器にラップを敷き、4~5等分量を流し入れて茶巾絞りにし、絞り口を輪ゴムなどで止めます。残りも同様に包み、氷水で冷やし、固めてできあがりです。
お好みで、わさび醤油やポン酢を付けて、楽しみましょう。
まとめ
古くから食べられているトウモロコシは、そのままおやつでも食べられるだけでなく、野菜としてサラダやスープ、コロッケと色々な具に使うこともできます。
栄養価も高く、色々な効果もあります。
トウモロコシは夏のおやつだけでなく、色々な食べ方もがあります。いつも茹でて食べるだけになっているあなた、これからは、色々な食べ方でトウモロコシを楽しんでみましょう。