イワデンダ科クサソテツ属のコゴミは、山菜の1つで、多年生シダの一種クサソテツの若芽です。
クサソテツは別名コゴメ、カンソウ、ガンソウ、カクマと呼ばれ、若芽のコゴミが山菜として食されています。
クサソテツは日本をはじめ、ヨーロッパ諸国では観葉植物として庭に植えられることがある植物です。
そんなコゴミの栄養と効能について見ていきましょう。
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コゴミの起源と歴史
コゴミが成長したクサソテツは、日本各地をはじめ、中央ヨーロッパ・北ヨーロッパ・北米大陸の北東部の河川敷や、山麓の湿地に自生している植物です。
観葉植物として庭に植えられることも多いクサソテツは、落葉性の多年生草本です。
日本では北海道から九州まで自生するクサソテツですが、起源はヨーロッパと言われています。
日本では、いつ頃から食べられているのかは定かではありません。元々、自生した植物を食べるのは、昔から全国各地で伝承されてきたことなので、かなり古いのではないかと考えられています。
コゴミは春に芽生えたクサソテツの若葉が、クルクルと「前かがみに屈んでいる」ことから、「こごみ(屈)」と名付けられました。
コゴミの種類
5月から6月になると、河川敷や山のふもとに渦巻状に丸まった幼葉が自生します。これが、クサソテツの若芽「コゴミ」です。
コゴミは代表的な山菜の1つで、おひたしや天ぷら、サラダなどで食されます。
ワラビほどではありませんが、独特のぬめりがあります。ワラビやゼンマイのようにアクがないため、簡単に調理することができます。
しかし、見た目が少しゼンマイと似ていますので、初めて調理する方は、間違わないように注意しましょう。
コゴミと同じ山菜の種類をご紹介します。
ワラビ
草原や谷地・原野などの、日当たりのよいところに群生している山菜の1つです。若芽を採取し、スプラウトとして食用にすることがあります。
生のままでは苦みが強く毒性があるため、必ず重曹や木灰を使った灰汁抜き後、熱湯で処理をして一晩寝かせます。
根茎から取れるデンプンを「ワラビ粉」といい、わらび餅の原料になります。
ワラビについては以下で詳しくまとめていますので、併せてご覧ください。
ゼンマイ
ゼンマイは、水気の多いところを好み、山野の渓流のそばや、水路の脇などによく生えています。新芽が平面上のきれいな渦巻き形になり、その表面には綿毛が被さっています。
アク抜きが必要で、スプラウトとして食用にするためには根元を折ります。その後、表面の綿毛をきれいに取って小さな葉をちぎり、軸だけにします。
茹でてあく抜き後、さらに天日に干すという手間がかかります。
新芽の外観は、ややコゴミと似ています。
コゴミの食感
コゴミには独特のぬめりがあり、それを残したまま調理します。
ワラビやゼンマイと違い、毒性やアクが少ないため、あらかじめ時間をかけてアク抜きをする必要がありません。
軽く茹でて、すぐに冷水で冷やし、水気を良く切るとそれほどぬめりがありませんが、茹ですぎるとぬめりが強くなり、ぬるぬるになってしまいます。
茹ですぎると、美味しくないと感じる方がいるので注意しましょう。
茹ですぎに注意したおひたしは、シャキシャキした食感になり、とても美味しいです。
コゴミの旬と有名な産地
コゴミの若芽を採取できるのは、地方によっても差があります。南の早い場所の場合、3月頃から出始めます。
4月頃になると、関西や本州中央あたりの平地でゴールデンウイーク前後あたりまで出回ります。ゴールデンウイーク頃からは、東北や高冷地で6月ごろまで収穫できます。
そのため、山で採取することが多いコゴミは、5月上旬から6月中旬に渦巻状に丸まった若芽を採取することが多いようです。
日本全国の山地で採取することができるコゴミですが、最近は栽培もされるようになりました。東北地方の山形県では、県の産地として青コゴミを紹介しています。
ほかにも、和歌山県や愛知県などもコゴミの産地として名を上げています。
良いコゴミの選び方
茎が太くて、葉がしっかり巻かれているものを選びましょう。茎や葉がしっかりしているほうが、シャキシャキした食感を味わうことができます。
市販されているものを購入するときは、茎の切断面が黒く変色しているものは収穫から時間が経っていますので、注意しましょう。
どうしても古くなって食べるときに黒くなっていたら、黒い部分は切り取って捨てて使います。
コゴミに含まれる栄養素
コゴミは、ワラビよりも多くのビタミンAを含んでいます。ほかにも葉酸やカリウム、ビタミンEを豊富に含んでいます。
また、不溶性の食物繊維も豊富で便秘予防効果もあります。
ワラビよりも多いビタミンA
コゴミに多く含まれるビタミンAは、目の機能を正常に保ち、粘膜や皮膚を強くする効果があります。
ほかに成長を促進させる効果もあり、現代人の大人はもちろん、成長期の子どもにも大切な栄養素になります。
ビタミンA(β-カロテン)を多く含む他の野菜は、以下があります。
目については、眼精疲労の改善についてヒントをまとめてみましたので、併せてご覧ください。
不溶性食物繊維
コゴミの食物繊維は不溶性になります。
不溶性食物繊維は、消化管を刺激し腸の働きを活発にします。満腹感を与えて、エネルギーの過剰摂取を防ぎます。
腸内の有害物質を吸着させて、体外に排出する働きがあります。
カリウムでナトリウムとのバランスを
コゴミに含まれるカリウムは、ナトリウムと作用し合い、細胞の浸透圧を維持したり、水分を保有する働きがあります。
カリウムには、ナトリウムが腎臓で再吸収されるのを抑制する働きがあります。尿の排泄を促す働きがあることから、血圧を下げる作用があるといわれています。
ナトリウムを多く含む他の野菜は、以下があります。
コゴミによる健康効果
便秘予防
コゴミの不溶性の食物繊維は、腸の働きを活性化して便量を増し、消化管通過時間を短縮することで、便秘予防につながる働きがあります。
便秘については以下にまとめてみましたので、併せてご覧ください。
血液サラサラで高血圧予防と貧血予防
コゴミにはたくさんの食物繊維を含むことで、腸内環境を整えます。さらに、コゴミに含まれるカリウムは、ナトリウムとのバランスを摂ることができます。
食物繊維で腸内環境を整え、カリウムによってナトリウムをはじめとする不要なものを排泄することができるため、血液がドロドロになることを防ぎます。
そのため、高血圧を予防する効果があります。
また、コゴミに含まれる葉酸は血液の量を増やす効果があり、貧血対策のほかに、血液をサラサラにする働きもあります。
さらにコゴミのビタミンEも強い抗酸化作用で、赤血球の溶血を防止する作用もあります。
高血圧予防だけでなく、貧血を予防する働きもあります。
むくみ改善
カリウムは、高血圧予防だけでなく、ナトリウムが腎臓で再吸収されるのを抑制する働きがあります。体内のナトリウムとのバランスを整える働きがあります。
カリウムの働きで、ナトリウムが尿とともに排泄することができます。そこで、むくみを改善する働きもあります。
むくみ改善については以下にまとめてみましたので、併せてご覧ください。
コゴミの下処理と保存方法
コゴミは山菜のため、長い間保存することはできません。適切な下処理を行うと、2日から3日程度保存することができます。
コゴミの下処理
茹ですぎると食感がぬるぬるになってしまうため、洗わずに生のまま穴の開いたポリ袋などに入れます。他の野菜のように、密封用のビニール袋に入れないよう注意しましょう。
乾燥には弱いですが、保存するときは時間をかけて洗ったり湿らせたりしないようにします。
サッと洗って、根元の硬い部分を1cmくらい切っておきます。
コゴミの保存方法
冷蔵庫(野菜室)に保存します。
ほかの野菜は湿らせた新聞紙で包んだりしますが、コゴミを包む場合は乾いた新聞紙に包むようにしましょう。キッチンペーパーでも良いです。保存期間は野菜室で2日から3日程度になります。
さらに保存をしたいときは、2%の塩をいれた熱湯で軽く(30秒~1分)茹でてから、冷凍庫で保存します。冷凍することで、風味を損なうことなく保存することができます。
食感を残すために、食べるときは自然解凍にします。一度茹でてあるため、そのままで和え物や揚げ物など料理に使うことができます。
コゴミのおすすめの調理法
コゴミは、和えものや天ぷらに入れることができます。それでは、代表的な和え物と少し変わったお料理をご紹介しましょう。
コゴミの胡麻和え
コゴミの胡麻和えの材料 (4人分)
食材 | 分量 |
---|---|
コゴミ | 20本~25本 |
白炒りごま | 大さじ4 |
醤油 | 大さじ1 |
だし汁 | 小さじ1 |
塩 | ひとつまみ |
コゴミの胡麻和えの作り方
-
こごみは硬い根元の部分を切り落としてよく洗います。洗った後、しっかりと水気を切ります。
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鍋にたっぷりの湯を沸かし、ひとつまみの塩を加えた中にコゴミを入れ、サッとひと煮立ちするまで軽く茹でます。
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サッと茹でた後は、素早く水に放して冷まし、水気を切っておきます。
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白炒りごまと醤油、だし汁をよく混ぜ合わせ、水気を切ったコゴミを加えて和えます。忘れてしまったら、白炒りごまを最後に振りかけても良いでしょう。
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器に盛り付けて、できあがりです。
ワラビやゼンマイのように、アク抜きの時間がかからないぶん、手軽に和え物を楽しむことができます。
もう一品は、少し変わり種です。
コゴミのグラタン
コゴミのグラタンの材料 (4人分)
食材 | 分量 |
---|---|
コゴミ | 15本 |
干し貝柱 | 2個 |
小エビ | 10尾~15尾 |
塩・バター | 少々 |
ホワイトソース | バター:25g 薄力粉:25g 牛乳:200ml 塩コショウ:少々 |
コゴミのグラタンの作り方
小エビは背ワタと殻を取って置きます。
コゴミは根元を切り、塩茹でにして水に取り、その後しっかり水気をきります。
干し貝柱を良くほぐして牛乳に浸けておきます。
鍋にバターを溶かして、小麦を加えて混ぜながら焦がさないように炒めます。貝柱を用意した牛乳に加えていきます。
オーブンを180℃に余熱しておきます。
牛乳は貝柱ごと少しずつ加えて混ぜながら、トロリとなるまで煮詰めます。最後に塩コショウをしておきます。
フライパンにバターを溶かし、エビとコゴミをサッと炒め、ホワイトソースを加えて混ぜます。
グラタン皿に入れて、180℃のオーブンで7分~8分間焼きます。
まとめ
山菜の代表的な食材であるコゴミ。コゴミは山菜ですが、アクが少なく手軽に料理することができる野菜になります。
アレルギーや毒性が無いコゴミですが、生で食べすぎると下痢や嘔吐、腹痛などの症状が出る方もいます。
栄養価の高いコゴミですが、初めて食べる方は食べ過ぎに注意し、生食は避けるようにしましょう。